Spring2020 他者排除行為
2020-02-10
前回補遺
MFN条項
総論
他者排除をめぐる違反要件の構造
競争関係必要説と競争関係不要説
各論
取引拒絶系
JASRAC事件
略奪廉売系
Intel事件
抱き合わせ
一般指定14項(競争者に対する取引妨害)について
話題のトピック
プラットフォーム、二面市場、間接ネットワーク効果
アフターマーケット
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前回補遺
MFN条項
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他者排除をめぐる違反要件の構造
行為要件
弊害要件
排除効果
市場閉鎖効果(主に取引拒絶系で使われる言葉(下記))と同義
市場から完全に排斥される必要はない
蓋然性で足りる
他の場で生き残れるか否かは関係ない
競争変数が左右される状態がもたらされることが必要か
(= 原則論貫徹説と排除効果重視説)
残った者が十分な競争をする場合
検討対象市場で行為者の市場シェア等が大きくない場合
US
EU
日本
正当化理由
因果関係
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競争関係必要説と競争関係不要説
議論なし
法域間で顕著な差が存在するが、自法域の考え方が当然と考えられているためか論点として意識されていない。
米国:競争関係必要説
EU:競争関係不要説
例は多数
日本:競争関係不要説
例は多数
競争関係必要説の論拠
「競争関係がないのに排除するということは、それなりの理由があるからであるはずだ」
競争関係不要説の論拠
搾取規制を行うか否かの問題と通底
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行為要件
取引拒絶に準ずるものも含む
①ブランド間競争の状況
②ブランド内競争の状況
③垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位
④垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響
⑤垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数および市場における地位
被排除者にとって代替的な競争手段がない、という要素が重要
間接ネットワーク効果 → 後述
正当化理由
不適切なものの排除
知的創作や投資のインセンティブ確保
因果関係
並行的な取引拒絶・排他的取引の場合に問題になる
事案
排除効果に関する判断(判決書6〜9頁)
最高裁には排除効果の成否の論点だけが上がってきた。
9頁末尾以下「4」は「人為性」に関する先例性の低い傍論判示なので省略
最高裁判決の判断内容
事実上の独占状態にあり、参入は困難であって、ほとんど全ての放送事業者は上記の内容の契約を行為者と結んでおり、競争者との取引が抑制される状況にあった。
多くの音楽は相互に代替的な関係にあり、放送事業者が行為者の音楽を選べば競争者の音楽が選ばれなくなるという関係にある。
7年余。
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コスト割れの有無が問題となる
価格設定の安全領域の確保
行為要件
コスト割れ(価格<コスト)
行為者のコストと行為者の価格を比較する
コストが高く算出されるほど違反となりやすい
http://shiraishitadashi.jp/_presen/keynote/ATC_JAAC.jpeg
コスト=「可変的性質を持つ費用」
重要にもかかわらず読みにくいガイドライン
原則として変動費のみ(固定費は含まない)
会計的には固定費とされる広告費や人件費でも、その安売りのためだけに使われたものはカウントする
☆ 例えば月ごと料金設定による継続取引で、最初の数ヶ月を無料とする場合の取扱い
弊害要件
排除効果
排除型私的独占ガイドライン第2の2と不当廉売ガイドライン3(2)★を総合すると、
まず、基本的には、他者が実際にどのような苦しい状況にあるかという点を正面から見るほかに、行為者の事業の規模や態様、廉売された商品役務の数量、廉売期間、広告宣伝の状況、商品役務の特性、行為者の意図・目的、などを総合的に考慮する。
価格が可変的性質を持つ費用を下回っていると排除効果があると認定されやすい
正当化理由
公共性
☆ 型落ち品など(?)
因果関係
並行的な廉売の場合に問題になる
略奪廉売系か取引拒絶系か
相手方におけるIntelシェアを条件としている場合
排除効果
uncontestable - contestable
行為者と同等に効率的な競争者がcontestableな部分だけにおいて勝負しても対抗できない場合に限って問題とする。
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平成4年 ドラクエⅣ事件 ドラクエⅣと不人気ソフトの抱き合わせ
公取委 不人気ソフト競争に影響、という論法
Tying in Yokohama
他者排除型と不要品強要型
米国では他者排除型が中心
Jefferson Parish Hospital District No.2 v. Hyde (1984)
EUでは(昔はそうでもなかったはずだが)1990年代以降?に米国の影響で他者排除型が中心的に論ぜられる。
日本では、ドラクエⅣ事件の反省を経て、別の問題として分けて両方を検討する考え方が一応は定着
不要品強要型は優越的地位濫用(搾取)の問題
行為要件
従たる商品役務を特定の者から買うことを条件として主たる商品役務を供給する
物理的
契約的
2つの商品役務といえるか
別々の需要があるか否か
排除効果
取引拒絶系と同じ。
正当化理由
あわせて供給することによる効率性
安全性確保
投資インセンティブの確保
因果関係
並行的な場合に問題になる
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一般指定14項(競争者に対する取引妨害)について
「取引妨害」
日本には、一般指定14項という、キャッチオール条項(しかも不正手段にも使われ得る)が存在する。
不正手段型行為
物理的妨害
虚偽の事実の告知流布
排除効果必要型行為
DeNA事件(平成23年)
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プラットフォーム、二面市場、間接ネットワーク効果
★コラム
都合により2行書き足すことになったので、三校ゲラのコラム3行目に下記を書き足しています。
プラットフォーム事業者を指すものとして「プラットフォーマー」という言葉が流行したが、日本の官庁等が作り出した和製英語であり、日本の官庁等も次第に使わなくなっている。
証拠
プラットフォームについては次回(第5回)にも取り上げる。
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★コラム
一定以上の長い期間にわたり用いられる商品役務とアフターマーケット商品役務
エレベータとメンテナンス
プリンタとインク
行為要件が問題となる例
排除効果(市場画定)が問題となる例
多数
正当化理由が問題となる例
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Google Search (Shopping)
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2020-02-10